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何億光年輝く星にも寿命がある

季節ごとに咲く一輪の花にも無限の命

 久しぶりに今日は晴れでした。

 午後一時、体育館から寮に戻って少し休んだらすぐ食堂に行って昼ご飯を食べました。いつもと同じ、注文する前に必ず「今日は何を食べようか」って迷う時間がありました。違った料理を提供する個々の配膳カウンターを順に回って歩いたら、ようやく列の最初のところに近いカウンターの前に止まっていました。そこで、レジ打ちの人が何かを台所からカウンターの上に運んで置くことを見ました。聞いてみたら、それはパイコー飯だってことが分かりました。食堂で見慣れた料理なのですが、食べたことは一度もありません。「試しに食べようか」って、今日は何故かそんな気持ちでした。

 座ってからまずは肉を口に入れました。平凡な味でした。いや、実は何の味もないっていう感覚でした。まあ、肉はともかくにして、とにかく肉に覆われた飯は食べようって思っていました。まあまあの程度から塩っぽく感じになりました。残念ながら、塩っぽいものは大苦手です。同じ料理を注文した人がいました。僕の真正面に座っていました。美味しそうに食べている様子が実に不思議だと思いました。その勢いに惹かれて、僕も飯をもっと食べようって思いました。でも、やっぱりだめのようでした。僕は塩っぽいものが大苦手です。

 食堂を出て、教室に行こうとしました。電動バイクの停まるところに行ったら、シートはとっくに埃に覆われたことに気づきました。それは、四月二十九日以来、ずっと同じところに停まっていたからです。僕の電動バイクは先月から学生寮と繋がっている道の端に停まるようになりました。道端に各種類の樹木が並んで、季節の移ろいと共に木の花は咲いたり枯れたり、木の葉は緑だったり黄色だったりして、美しい限りです。僕の電動バイクはいつもそういう木々の下に停まります。だから、散る花や落ちる葉がいつバイクシートの表に落ちて、そしてそのまま付けてもおかしく無いでしょう。つい最近、四季咲き金木犀の花が咲いたみたいです。漂っている香りが甘くて、落ちた花に僕の電動バイクもそういう香りを放つようになりました。

 木々の中に、アナベルがあります。紫陽花の仲間であり、花色は白で、純粋、純潔な印象が強いと思います。四月の月初めから咲き、枯れてゆくと色を失って臭い匂いをする花は、今になってついなくなりました。振り返って見ると、四月下旬に枯れた花の写真を撮る記憶があります。

「花はもう枯れたんじゃない?なんで写真を撮る?」と近くのオフィスで働くおばさんに聞かれました。

「花の咲く姿と枯れる姿、全部見たいからね」

「それは面白い。君の話を聞いて、私も見たいなぁ」

「おばさんはすぐ隣だから、いつでも見られるんじゃない」

「でも、仕事をしていたら、花を見る気持ちはなかなか無くてね」

「なるほど」

「今度写真を撮る時、私を呼んでもらってもいいかな。誰かと一緒なら、気持ちもよくなる」

「いいよ」

でも実際、その道はほぼ毎日通っていますが、アナベルの写真はそれきりで撮っていませんでした。

四月に盛んに咲いて見事に枯れていたのは、アナベルの花だけではありませんでした。

初めての電話は学生寮二階の廊下でしていました。両側の部屋に挟まれて狭い廊下で電話をするのは、声があまりにも目立っていました。でも、最初の僕は、それに気づきませんでした。一週間連続で毎日同じところで電話をしたら、隣の学生はとうとう我慢できなくて、学校の電子掲示板で愚痴を不満そうに投稿しました。「寮の廊下で毎日日本語で電話をする人がいた。実にうるさいと思う。あの人に何か言ってもいい?」と怒っているようでした。申し訳なく、それからは他のところで電話をすることに決めました。ルームメートがいなかったら寮で、時間的に余裕があったら寮から十分ぐらいかかる遠い教室で、または階段、ベランダ、そして道の中、様々なところで電話をしていました。あっちこっち行くのは大変だけど、電話すると楽になり楽しいと思っていました。

五月五日は立夏の日でした。これは、春の終わりと夏の始まり両方を意味しています。近ごろ、雨は頻りに降ってきて、気温もそれなりに高くなっています。今はもはや上着を羽織っているだけで熱く感じる時期となりました。これで、春にしか咲かない花は自ずと消えてゆき、夏に咲く花の出番となりました。季節の変わりに、風に吹かれなくとも花は散ります。四月の花が散って、また五月の花は咲きます。五月の花も必ず散って、他の花が咲きます。でも、これらの花が如何に散っても、来年の同じ時期になれば、また見事に咲くのでしょう。それにしても、花との巡り合いはたった一度のことであることが分かっています。自然は生きていて、常に変化してゆくからです。また、それを見るわたしたち自身も、日々移ろい変わってゆきます。

これからも、驚喜と意外性が常に訪れ、毎日楽しく幸せに過ごすことを祈っています。

君に幸あれ。